mimiレディースクリニック三越駅前店

排卵誘発剤について(治療について)

排卵誘発剤について

目次

1. 排卵誘発剤とは

排卵誘発剤とは、排卵がうまく起こらない女性に対して「卵胞を育て、排卵を促す」ために使用される薬剤のことです。
月経があっても排卵していない場合や、卵胞が十分に育たない場合、また妊娠を希望しても自然に排卵日が安定しない場合に用いられ、不妊治療において非常に重要な役割を果たします。

排卵は、女性の体が本来持つ自然な機能ですが、
ホルモンバランスの乱れ・ストレス・加齢・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、さまざまな要因によってうまく機能しなくなることがあります。
その結果「無排卵」「排卵が遅れる」「卵胞が育たない」などが起こり、妊娠のタイミングが取りづらくなります。

排卵誘発剤は、こうした“排卵の仕組みのトラブル”をサポートし、妊娠しやすい環境を整えるための治療薬です。

排卵の仕組みと誘発剤が必要になる理由

排卵は、脳と卵巣がホルモンを通じて連携しながら進む、とても繊細なプロセスです。

  1. 脳(視床下部・下垂体)からFSHが分泌され、卵胞が成長する
  2. 卵胞が十分に育つとエストロゲンが増え、排卵の準備を整える
  3. LHサージ(急激なホルモン上昇)が起こり、卵子が排卵される

このどこかが乱れると、排卵は正常に起こりません。
たとえば、 
 ・PCOSによる卵胞の発育不良
 ・加齢による卵巣機能の低下
 ・ストレスや疲労によるホルモンの乱れ
 ・体重の急激な変動
などが原因となります。

こうした状況で排卵を「自然に待つ」だけでは妊娠のチャンスが限られてしまいます。
そこで排卵誘発剤は、
 ・卵胞をしっかり育てる(刺激)
 ・排卵を確実に起こす(トリガー)
ことを助ける役割を担い、妊娠可能性を高めてくれます。

不妊治療における役割

排卵誘発剤は、不妊治療の中でも最も基本的かつ重要なステップとして位置づけられています。

● 妊娠率を上げる「第一段階の治療」
自然排卵が不安定な女性にとって、排卵誘発剤は妊娠への大きな近道です。
タイミング法や人工授精(AIH)と組み合わせることで、妊娠率が高まることが多く、最も多くの患者様が利用する治療法とも言えます。

「卵子の質」が決まる大事なステップ
卵胞がきちんと育つことで、成熟した卵子が排卵されます。
これは妊娠においてとても重要で、
排卵誘発剤は質の良い卵子を育てるためのサポートとしても使われます。

● ステップアップ治療にも必須
人工授精だけでなく、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)においても、卵巣刺激として排卵誘発剤は欠かせません。
目的に応じて、
 ・内服薬(クロミッド・レトロゾール)
 ・注射薬(HMG・FSH製剤)
 ・HCGトリガー
などを組み合わせ、最適な排卵を促します。

2. 排卵誘発剤の種類と特徴

排卵誘発剤にはいくつか種類があり、それぞれ働き方や効果、使用のタイミングが異なります。
患者さん一人ひとりの体質・卵巣機能・治療ステップに合わせて選択されるため、特徴を正しく理解しておくことが重要です。

クロミフェン(クロミッド)

クロミフェン(商品名:クロミッド)は、最もよく使われる排卵誘発の内服薬です。
脳の視床下部に作用し、「エストロゲンが不足している」と脳に錯覚させることで、FSH(卵胞刺激ホルモン)を増やし、卵胞の発育を促します。

【特徴】
 ・タイミング法・人工授精(AIH)で最も使用される
 ・飲み薬のため取り入れやすい
 ・多胎妊娠が起こる可能性はやや上がる(2〜3%程度)
 ・長期使用で子宮内膜が薄くなりやすいことがある
PCOSなど「卵胞が育ちにくい方」に特に有効な薬です。

レトロゾール(フェマーラ)

レトロゾールは、本来は乳がん治療に使われていた薬ですが、近年は排卵誘発剤として世界的に広く使用されています(フェマーラが有名)。

【特徴】
 ・クロミフェンが効きにくい人に効果が出やすい
 ・子宮内膜が薄くなりにくい
 ・多胎妊娠のリスクが比較的低い
 ・PCOSに対して第一選択薬とされる海外ガイドラインも多い
ホルモンのバランスを整えながら自然に近い排卵を促すため、「内膜が薄くなる副作用が心配な方」に向いています。

HMG / FSH 注射(ゴナドトロピン製剤)

HMG(ヒト閉経期ゴナドトロピン)やFSH製剤は、卵巣に直接働きかけて卵胞を育てる注射の排卵誘発剤です。

【特徴】
 ・内服薬より強い刺激で卵胞が複数育ちやすい
 ・卵巣予備能が低い方、高年齢の方に適している
 ・体外受精(IVF)では必須の薬
 ・過剰に反応するとOHSS(卵巣過剰刺激症候群)が起こることがある

卵胞の育ち方を見ながら、「少しずつ量を調整」して使うのが一般的です。

 ⇑「排卵誘発剤の種類について」こちらでも解説しています

ブセレリン点鼻薬と排卵タイミング

ブセレリン点鼻薬は、HCG注射の代わりに排卵を確実に起こすための薬で、当院では排卵誘発治療の重要なステップとして使用しています。
鼻腔にスプレーすることで脳を刺激し、自然な排卵と同じようにLHサージを起こし、約36〜40時間後に排卵が起こります。
注射が不要なため負担が少なく、またOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを抑えられるのも大きな利点です。
卵胞の大きさを超音波で確認したうえで、最適なタイミングで使用することが妊娠率向上の鍵となります。使用方法やスケジュールは個々に調整しますので、安心してご相談ください。

内服薬と注射薬の違い

排卵誘発剤は「飲み薬」と「注射薬」で性質が大きく異なります。

● 内服薬(例:クロミフェン、レトロゾール)
 ・体への負担が少なく始めやすい
 ・卵胞を1〜2個育てるのに向いている
 ・タイミング法・人工授精でよく使われる
● 注射薬(例:HMG、FSH、HCG)
 ・直接卵巣に作用し強い効果
 ・卵胞が複数育つ可能性あり
 ・体外受精や内服薬で成果が出にくい方に有効

治療のステップや年齢、卵巣の反応性により、内服薬から始めるか、注射薬へ進むかを医師が判断します。

3. 排卵誘発剤はどんな人に向いている?

排卵誘発剤は、すべての方に必要な治療ではありません。
しかし、排卵に関するトラブルを抱えている場合、適切に使用することで妊娠の可能性を大きく高められる重要な治療法です。
ここでは、排卵誘発剤が特に効果を発揮しやすいケースをご紹介します。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

PCOSは、卵胞が育ちにくく排卵が起こりづらい代表的な疾患です。
排卵が月に一度うまく起こらないことで、妊娠のチャンスそのものが減少してしまいます。
排卵誘発剤は、卵胞の成長をサポートし、安定して排卵が起こる状態 を作り出すことができます。
特にレトロゾールやクロミフェンが第一選択としてよく使われます。

※多嚢胞性卵巣症候群についてはコチラ

高齢妊娠希望

年齢とともに卵巣機能は低下し、卵胞が育ちにくくなったり、排卵が遅れたりすることがあります。
そのため、高齢で妊娠を希望される場合は、ひとつひとつの排卵チャンスを確実にする ことが重要です。
排卵誘発剤を用いることで、卵胞の成長を促し、より妊娠しやすい周期を作ることができます。
治療ステップに応じて、内服薬・注射薬を使い分けます。

無排卵・稀発排卵

月経はあっても排卵が起きていない「無排卵」、
周期が35日以上と長く排卵回数が少ない「稀発排卵」では、自然妊娠が難しくなります。
排卵誘発剤は、こうした 排卵回数そのものを増やす 治療として非常に有効です。
適切な薬剤を使用し、卵胞が毎周期育つようサポートすることで、妊娠の可能性が安定します。

タイミング法・人工授精との併用

排卵誘発剤は、タイミング法や人工授精(AIH)と非常に相性が良い治療です。
卵胞を確実に育て、排卵のタイミングをコントロールすることができるため、
「タイミングが合わずに妊娠できていない」ケースに特に有効 です。

  • 内服薬で卵胞を育てる
  • ブセレリン点鼻で排卵時刻を調整する
  • ベストなタイミングで性交またはAIH
    という流れが、妊娠率アップに直結します。

4. 排卵誘発の治療スケジュール

排卵誘発治療は、“月経中” からスタートし、その周期ごとに治療のタイミングが決まっています。
ここでは、実際の治療の流れを時系列でわかりやすく解説します。

月経開始からの治療フロー

一般的な1周期の排卵誘発治療は次のように進みます。

  1. 月経1〜3日目:受診・ホルモン採血・超音波検査
     卵巣の状態を確認し、誘発方法(内服 or 注射)を決定します。
  2. 月経3〜5日目:内服または注射を開始
     卵胞の成長を促します。
  3. 月経10日目前後:卵胞チェック(経腟エコー)
     卵胞の大きさを測定し、排卵予定日を予測します。
  4. 排卵直前:ブセレリン点鼻などで排卵のタイミングを調整
  5. ベストな時期にタイミング法または人工授精
  6. 排卵後:黄体ホルモン補充や着床サポートの治療

周期により多少前後しますが、この流れを毎月繰り返しながら妊娠率を高めていきます。

内服薬の飲むタイミング

排卵誘発の内服薬(クロミフェン・レトロゾールなど)は、
月経3〜5日目から5日間連続で内服 するのが一般的です。

  • 朝・夜どちらでもOK(毎日同じ時間に)
  • 服用開始日は医師が卵巣の状態を見て決定
  • 副作用が出やすい方には服用の時間調整や薬剤変更を行うことも可能

内服薬で卵胞が順調に育てば、追加の刺激が不要なケースもあります。

注射のスケジュール

注射(HMG・FSH製剤)は、卵巣を直接刺激し、卵胞をしっかり育てるために使用します。

  • 使用開始:月経3〜5日目
  • 頻度:週2〜3回、または毎日少量を継続
  • 卵胞の状態を見ながら、その都度量を調整

注射の回数は卵巣の反応によって大きく変わります。
反応が強い方は少量で十分、反応が弱い方は回数が増えることがあります。

卵胞チェック(経腟エコー)

卵胞チェックは排卵誘発治療の要です。
卵胞の大きさや子宮内膜の厚さ、左右卵巣の反応 を確認し、排卵日を予測します。

一般的な目安は:
 ・ 卵胞の大きさ 18〜20mm → 排卵直前
 ・ 子宮内膜 8mm以上 → 着床しやすい状態

経腟エコーは痛みが少なく、数分で終了する簡単な検査です。

排卵予測とタイミング指導

卵胞が排卵サイズになったら、
ブセレリン点鼻薬(GnRHアゴニスト) を用いて排卵のタイミングを調整します。

点鼻から約36〜40時間後に排卵が起こるため、
 ・ タイミング法 → 最適な性交日を指示
 ・ 人工授精 → 実施日を正確に決定
が可能になります。

排卵タイミングの調整は妊娠率を大きく左右する重要なポイントで、
ホルモン検査やエコー所見を基に、患者様ごとに最適なスケジュールを設定します。

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5. 排卵誘発剤の副作用

排卵誘発剤は妊娠の可能性を高める大切な治療ですが、ホルモンに働きかける薬であるため、副作用が起こることがあります。
副作用の多くは軽度で一時的なものですが、正しく理解しながら治療に臨むことが大切です。ここでは代表的な副作用について解説します。

多胎妊娠(双子以上)のリスク

排卵誘発剤を使用すると、通常より多くの卵胞が育つことがあります。
そのため 双子以上の多胎妊娠の可能性が自然妊娠より高まる とされています。
 ・ 内服薬:2〜5%前後
 ・ 注射薬:10%前後(卵胞が複数発育しやすいため)

多胎妊娠は、母体への負担・早産リスクが増えるため、卵胞チェック(経腟エコー)で育ちすぎていないか確認しながら治療を進めます。当院でも安全性を最優先し、卵胞数を慎重に管理しています。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤、とくに注射薬(HMG・FSH製剤)により卵巣が強く反応すると、卵巣が腫れて腹水がたまる OHSS(卵巣過剰刺激症候群) が起こることがあります。

症状の例
 ・ 下腹部の張り
 ・ 体重増加(急激な場合は注意)
 ・ 吐き気
 ・ 息苦しさ(重度の場合)

特にPCOSの方はOHSSのリスクが高いため、低用量スタートやブセレリン点鼻薬での排卵誘発など、リスクを下げる治療を行います。
エコーや血液検査で反応を細かく見ながら治療するため、重症化するケースはまれです。

頭痛・吐き気・腹部膨満感など

排卵誘発剤では、ホルモンの変化により 軽い身体症状 が出ることがあります。

よくある症状
 ・ 頭痛
 ・ 吐き気
 ・ むくみ
 ・ 下腹部の張り
 ・ 軽い乳房の張り

いずれも一時的で、排卵が終わると自然に落ち着くことがほとんどです。
日常生活が困難になるほどの強い症状がある場合は、薬剤変更や量の調整が可能なので遠慮なくご相談ください。

精神的な不調(ホルモン変動)

排卵誘発治療中は、ホルモン値が普段より大きく変動することで 気分の落ち込み・イライラ・不安感 が現れることがあります。
 ・ クロミフェン:感情の揺れを感じる方が比較的多い
 ・ 注射薬:ホルモン変動が大きいため、敏感な方は情緒不安定に
治療による精神的負担は珍しくありません。
「薬の副作用なのか、ストレスなのか分からない」という場合も含め、気になる症状は早めに医師に相談することで、治療と心のケアを両立できます。

6. 排卵誘発剤の効果と成功率

排卵誘発剤は、排卵が安定しない方やPCOSの方をはじめ、多くの不妊患者さんに有効な治療です。
卵胞をしっかり育て、排卵のタイミングを整えることで「妊娠できるチャンスそのものを増やす」役割があります。
ここでは一般的な効果の目安や成功率、治療を続ける期間、そして年齢との関係について解説します。

妊娠率の目安

排卵誘発剤を用いた治療の妊娠率は、
タイミング法・人工授精(AIH)のいずれも自然周期より上がる傾向 があります。

  • タイミング法 × 排卵誘発剤
     → 1周期あたりの妊娠率:8〜20%程度
  • 人工授精(AIH) × 排卵誘発剤
     → 1周期あたりの妊娠率:10〜20%程度

排卵が起きていない、または排卵が安定しない方にとって、排卵誘発剤は大きな治療効果を発揮します。
※成功率は年齢・卵巣機能・治療内容により変動します。

治療を続ける期間

排卵誘発法は、すぐに結果が出るとは限りません。
目安としては、3〜6周期ほど継続 して治療効果を評価します。

治療継続の目安
 ・ 3周期:排卵誘発に対する反応を確認
 ・ 6周期:妊娠につながるかどうかの判断
 ・ 6周期以上:効果が乏しい場合は治療ステップアップを検討

排卵が安定して起こるようになるだけでも妊娠の可能性は高まるため、焦りすぎず治療を継続することが大切です。

年齢・卵巣予備能との関係

排卵誘発治療の効果には、年齢と卵巣予備能(AMH値) が大きく影響します。

● 年齢と成功率

加齢に伴い卵巣機能が低下すると、
 ・卵胞が育ちにくい
 ・卵子の質が低下する
 ・排卵しても受精・着床が難しくなる
といった変化が起こります。

35歳頃から妊娠率は低下し、40歳以降は治療方法を慎重に選ぶ必要があります。

● 卵巣予備能(AMH値)

AMH値が低い場合は、
 ・卵胞が育ちにくい
 ・卵巣の反応が弱い
ため、
注射薬でしっかり刺激する方法 や
早めのステップアップ(AIH→IVF) を検討することもあります。

逆にAMHが高いPCOSの方は、軽い刺激でも複数卵胞が育ちやすいため、低用量での誘発が向いています。
 🌟AMHについての記事はコチラ

7. 自宅でできる排卵サポート

排卵誘発剤による治療を行う際、自宅でのセルフケアを取り入れることで、より妊娠しやすい体づくりが可能になります。
排卵のリズムを整え、ホルモンバランスをサポートする日常習慣は、無理なく今日から始められるものばかりです。

基礎体温・排卵検査薬の活用

基礎体温(BBT) は、排卵の有無や黄体機能を知る大切な指標です。
毎日同じ条件で測定し、
 ・高温期があるか
 ・排卵予測が安定しているか
を確認します。

一方で、基礎体温だけでは排卵日を正確に予測しにくいこともあります。
そのため、排卵検査薬(LH検査薬) を併用することで、排卵前のLH上昇をとらえやすくなり、タイミングの精度が高まります。

タイミング法を行う場合や、排卵誘発剤を使用している周期でも、セルフチェックとして非常に役立ちます。

睡眠・食事・ストレスケア

排卵にはホルモンの分泌が深く関わっているため、生活習慣が大きく影響します。

● 睡眠

  • 6〜7時間以上の睡眠
  • 日付が変わる前に寝る習慣
    がホルモンバランスを整えます。

● 食事

  • タンパク質をしっかり摂る(卵・魚・肉・大豆)
  • 野菜・果物でビタミン・ミネラル補給
  • 血糖値を急激に上げない食事(PCOSの方にも有効)

妊娠を目指す方は、鉄分・葉酸などの補給もおすすめです。

● ストレスケア

慢性的なストレスは排卵を抑制し、ホルモン分泌を乱す原因に。
深呼吸、趣味、軽い運動、アロマなど、“自分に合ったリラックス方法” を見つけることが大切です。

適度な運動と体重管理

体を動かすことは排卵機能に良い影響を与えます。
 ・ウォーキングや軽い筋トレ
 ・ヨガ・ストレッチ
 ・自転車や水泳
など、負担の少ない運動で十分です。

また、BMIが高すぎても低すぎても排卵が不安定になりやすい ため、適正体重を維持することが重要です。
特にPCOSの方では、体重の5〜10%減少で排卵が改善することが多く見られます。

アルコール・喫煙の影響

アルコールと喫煙は、卵巣機能・ホルモンバランスに悪影響を与えます。

● アルコール

適量であれば大きな問題にはなりませんが、習慣的な飲酒は
 ・排卵障害
 ・着床率の低下
 ・黄体機能への影響
が指摘されています。

● 喫煙

  • 卵子の質の低下
  • 卵巣機能の早期低下
  • 流産率の上昇
    など、妊娠に大きくマイナスです。
    禁煙は妊活における最優先のセルフケアといえます。

8. 排卵が起きなかったときの対応

排卵誘発剤を使用しても、卵胞が十分に育たなかったり、排卵まで至らないことがあります。
これは珍しいことではなく、卵巣の反応性・ホルモンバランス・年齢などさまざまな要因が関係します。
排卵が起きなかった場合でも、治療法を調整することで多くの方が排卵できるようになりますのでご安心ください。

薬剤の変更

最初に使用した排卵誘発剤が体に合わない場合、
薬剤の種類を変えるだけで反応が改善するケースは非常に多い です。

例:
 ・クロミフェン → レトロゾールへ変更
 ・内服薬 → 注射薬へ変更
 ・内服と注射を併用する方法へ切り替え
それぞれ作用の仕組みが異なるため、患者さんの卵巣機能に合った薬を選ぶことで排卵が起こりやすくなります。

投与量アップ

薬剤を変更せず、同じ薬を少しだけ増量する方法 も一般的です。
特にクロミフェンやレトロゾールは、

  • 25mg → 50mg
  • 50mg → 75mg
  • 1錠 → 2錠
    といったように段階的に量を調整できます。

卵巣の反応を見ながら最小限の副作用で最大の効果を得られるよう、慎重に増量していきます。

注射治療へのステップアップ

内服薬で排卵が起きない場合、より強い刺激が可能な
HMG / FSH 注射(ゴナドトロピン製剤)
へステップアップする選択肢があります。

注射薬の特徴:
 ・卵巣に直接作用し、卵胞が育ちやすい
 ・量の調整がしやすい
 ・PCOSや低AMHの方にも対応しやすい

超音波で卵胞の育ち方を確認しながら、その都度注射量を細かく調整するため、個々の反応に合わせた治療が可能です。

人工授精や体外受精への移行判断

排卵は起きても妊娠につながらない場合や、
排卵誘発剤を複数周期使用しても排卵が安定しない場合には、治療ステップの見直し を検討します。

人工授精(AIH)への移行を考えるケース
 ・ 排卵は起きるがタイミングが合いにくい
 ・ 精子数・運動率がやや低い
 ・ 治療期間が長くなってきた

体外受精(IVF)を検討するケース
 ・ 卵巣の反応性が低い(低AMHなど)
 ・ 年齢的にステップアップが望ましい
 ・ 内服・注射を繰り返しても排卵が起こりにくい

治療効果が得られない周期が続いた場合、
「次のステップへ進むこと」が妊娠への近道となる場合があります。

9. 排卵誘発治療でよくある質問(Q&A)

排卵誘発治療を始めると、薬の効果や副作用、治療期間など、さまざまな疑問が出てきます。
ここでは、患者さんから特に多く寄せられる質問にお答えします。

「効いてるかどうかわからない」

排卵誘発剤は、飲んだだけでは効果がわかりません。
効いているかどうかは、卵胞チェック(経腟エコー)で判断します。

  • 卵胞が育っているか
  • 子宮内膜が整っているか
  • 排卵のタイミングが近いか

これらを医師が超音波で確認するため、「効いているかの見極め」はご自身では難しいものです。
定期的なエコーが必須ですので、安心して診察にお越しください。

「副作用が不安」

排卵誘発剤はホルモンに働きかける薬のため、副作用が出ることがあります。
よく見られるのは以下のような症状です。

  • 頭痛
  • 吐き気
  • のぼせ
  • 腹部の張り
  • 情緒不安定

多くは軽度で一時的ですが、強い痛みや急激な体重増加がある場合は OHSS(卵巣過剰刺激症候群) の可能性もあるため、すぐにクリニックへご連絡ください。
副作用を抑えるための薬剤変更や量の調整もできますので、不安を抱えずにご相談ください。

「治療はどれくらい続ける?」

排卵誘発治療は、一般的に 3〜6周期 を目安に行います。

  • 3周期:薬剤への反応を確認
  • 6周期:治療効果を評価
  • 6周期以上:改善が乏しければステップアップを検討

患者さんの年齢・卵巣予備能・治療歴によって最適な期間は異なります。
焦らず、身体の反応を見ながら治療を進めていきます。

「太るって本当?」

排卵誘発剤そのものが脂肪を増やすわけではありませんが、
一時的なむくみや食欲の変化 を感じる方はいます。

理由は:
 ・ホルモン変動による水分貯留
 ・emotional eating(ストレスによる食欲変化)

多くは排卵後に自然と落ち着きます。
もし体重変化が気になる場合は、食事の見直しや軽い運動でサポートできますのでご相談ください。

「排卵したかどうやってわかる?」

排卵が起きたかを確実に判断する方法は、経腟エコー です。

排卵後の特徴:
 ・卵胞が消失している
 ・卵胞がしぼんで“黄体”に変化している
 ・腹腔内に少量の腹水が見られることもある

基礎体温が上がることで推測はできますが、
確実な判断は医療機関でのエコー確認となります。

10. まとめ:あなたに合った排卵誘発法を一緒に選びましょう

排卵誘発治療は、「排卵を確実に起こす」という医学的な目的だけでなく、
あなたの身体と気持ちに寄り添いながら妊娠の可能性を高めるための治療 です。
脳・卵巣・ホルモンが複雑に連動しているため、個人差が大きく、“自分に合う方法” を見つけることが何より大切です。

無理のない治療で妊娠率を高める

排卵誘発剤には内服薬・注射薬・点鼻薬などさまざまな種類があり、
卵巣の反応や体調に合わせて方法を調整することで、
身体への負担を抑えながら妊娠率を最大限に高めることが可能 です。

治療は「強い刺激が良い」わけではなく、
あなたの卵巣機能に合わせて“ちょうど良い刺激量” を見つけることが成功のポイントです。

早めの婦人科受診が妊娠への近道

排卵が不安定な方や、生理周期が読みづらい方、
半年〜1年以上妊娠しない場合は、早めの婦人科受診がおすすめです。

卵巣機能は年齢とともに変化していくため、
早めに体の状態を知り、適切な治療をスタートすることが妊娠への一番の近道 です。

気になる症状がある場合や、不安があるときは、いつでも相談してください。

医師と相談しながら最適な薬を選択

排卵誘発剤は、薬の選び方・量・タイミングによって効果が大きく変わります。
だからこそ、
医師と一緒に、あなたに最適な誘発方法を選択することがとても重要 です。

  • 内服薬で自然に近い排卵を促す
  • 注射薬でしっかり刺激して卵胞を育てる
  • ブセレリン点鼻で排卵を確実にコントロールする
    など、選択肢は多くあります。

治療に対する不安や疑問も一緒に確認しながら、
あなた自身が納得できる治療計画を立てていきましょう。

 🌟まずはご相談から。当院ご予約はコチラ

作成日:2025.12.09
更新日:2025.12.09

医師紹介

院長挨拶

mimiレディースクリニック三越前
院長 産婦人科専門医

干場 みなみ

経歴
日本大学医学部 卒業
日本赤十字社医療センター 勤務
国立国際医療研究センター 勤務
リプロダクションクリニック東京 勤務
まきレディースクリニック、biotopeクリニックを経て2023年12月開業に至る。

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