無月経について(治療について)
無月経について
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目次
1. はじめに

無月経には、大きく分けて「原発性無月経」と「続発性無月経」の2つがあります。
原発性無月経とは、15〜16歳になっても、乳房の発達など二次性徴がみられるにもかかわらず、一度も初潮がこない状態を指します。
一方、続発性無月経とは、これまで順調に生理があった方が、何らかの原因によって3か月以上生理が止まってしまう状態です。こちらのほうが比較的多くみられます。
続発性無月経の原因としては、急激な体重の増減、強いストレス、過度なダイエットや運動、ホルモンバランスの乱れ、子宮や卵巣の病気などが挙げられます。
無月経の原因を正しく見つけるためには、これまでの月経の状況や生活習慣、体調の変化などを詳しく確認することが大切です。必要に応じて、血液検査によるホルモンチェックや超音波検査などを行い、原因に合わせた治療を進めていく必要があります。
生理は女性の体の状態を知る大切なバロメーターとなります。無月経をそのまま放置せず、早めに婦人科で相談することが、将来の健康や妊娠・出産のためにも重要です。
2. 正常な月経周期
月経周期とは、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの期間を指します。一般的には約28日周期といわれていますが、25日〜38日程度であれば正常な範囲とされています。
初めての生理(初潮)は、通常12歳〜15歳頃にみられますが、これには個人差があります。その後、閉経を迎える50歳前後まで、一定のリズムで月経が続くのが一般的です。
この月経周期は、脳と卵巣が連携しながら分泌するホルモンによってコントロールされています。
まず、脳の視床下部から「GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)」が分泌され、それによって下垂体が刺激されます。すると、「FSH(卵胞刺激ホルモン)」と「LH(黄体形成ホルモン)」という2つのホルモンが分泌されます。
FSHは卵巣に働きかけて卵胞を育て、成熟した卵胞は「エストロゲン(女性ホルモン)」を分泌します。エストロゲンは子宮内膜を厚くし、妊娠に備える役割があります。

4. 症状と関連症状
無月経は単なる「月経がない」という症状にとどまらず、多くの場合、他の体調不良や症状が伴います。特に多毛症や乳汁分泌といった異常は、無月経の患者さんによく見られる兆候であり、これらの症状はホルモンバランスの崩れが原因であることが多いです。多毛症は体の特定の部分、特に顔や胸など、男性的なパターンでの過剰な毛の成長を指します。これは主にアンドロゲン(男性ホルモン)の過剰によって引き起こされます。一方で、乳汁分泌はプロラクチンというホルモンのレベルが異常に高いことによって起こり得ます。これは妊娠していない女性においては特に注意が必要な症状であり、しばしば下垂体の問題を示唆しています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは無月経の女性に頻繁に見られる状態で、ある種類のホルモンが分泌されづらいことが特徴です。この状態は、不規則な月経周期、多毛症、肥満、そして卵巣に多数の小さな嚢胞が形成されることで知られています。PCOSにおいては、インスリン抵抗性が高まることも一般的であり、これがさらなるホルモン異常を引き起こす可能性があります。治療には生活習慣の改善、ホルモン調整薬の使用、必要に応じて排卵誘発剤が使用されます。


甲状腺機能障害
甲状腺の機能が低下すると(甲状腺機能低下症)、または過剰に活動すると(甲状腺機能亢進症)、月経周期に影響を及ぼすことがあります。甲状腺機能低下症では、体の代謝が遅くなり、疲労感、体重増加、寒がり、便秘などの症状が表れることがあります。一方、甲状腺機能亢進症では、体の代謝が高まり、不眠、体重減少、熱感、動悸などが生じることがあります。どちらの場合もホルモン治療が必要となりますが、適切な診断と治療計画のためには専門的な検査が不可欠です。
これらの症状や関連病状が無月経の背後にある場合、単に月経が停止しているという事実以上に、全体的な健康への影響を評価し、適切な治療法を提供するための全身的なアプローチが必要です。これには、生活習慣の見直しや、必要に応じてホルモン補充療法、そして心理的なサポートも含まれることがあります。
5. 無月経の診断
6. 治療
ホルモン療法
ホルモンの不均衡が無月経の原因である場合、エストロゲンとプロゲステロンの補充療法がよく用いられます。これにより月経周期を正常化し、子宮内膜の健康を維持します。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や甲状腺機能障害など、特定のホルモン異常が確認された場合には、それに適したホルモン剤が処方されることがあります。また、プロラクチンの過剰分泌が原因である場合は、ドーパミンアゴニストが使用されることもあります。
低用量ピルについてはこちらをご参照ください。
手術
解剖学的な異常が原因である場合、例えば子宮内膜症や子宮奇形などが原因の場合、手術による治療が提案されることがあります。手術は、異常な組織を除去したり、生殖器の構造を正常に戻すことを目的として行われます。手術はリスクを伴うため、他の治療方法と比較して利益とリスクを慎重に評価した上で選択されます。
生活習慣の修正
ストレスや過度のダイエット、極端な運動が原因で無月経になっている場合、生活習慣の見直しが推奨されます。適度な運動、バランスの取れた食事、ストレスマネジメントの技術が役立ちます。心理的なサポートや栄養指導も有効です。
妊娠を望む女性へ
無月経の治療において、将来の妊娠を希望する女性には特別な配慮が必要です。妊娠可能性を高めるために、排卵誘発剤の使用や、必要に応じて体外受精などの生殖補助技術を検討することがあります。治療の選択は、患者さんの年齢、健康状態、個々の希望によって異なります。
不妊治療についてはこちらをご参照ください。
7. 予後と管理
無月経の予後と長期的な管理は、原因に大きく依存しますが、多くの場合、適切な治療と継続的なフォローアップにより改善が見込まれます。無月経の慢性的な原因としては、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能障害、下垂体障害などがありますが、これらの状態はそれぞれ異なる治療で管理していきます。
慢性疾患の長期管理
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):
- 管理: PCOSはライフスタイルの変更、ホルモン治療、必要に応じて不妊治療を含む総合的なアプローチで管理されます。定期的な体重管理、食生活の調整、運動が基本的な治療の柱です。インスリン抵抗性が関与している場合は、メトホルミンの使用が有効であることが示されています。
- 予後: 適切に管理されると、多くの女性が症状の改善を経験しますが、PCOSは生涯にわたる管理が必要な場合があります。
- 甲状腺機能障害:
- 管理: レボチロキシンなどの甲状腺ホルモン補充療法が一般的です。定期的な血液検査によりホルモンレベルがモニタリングされ、適切な投薬量が調整されます。
- 予後: 適切な治療を受ければ、甲状腺機能障害による無月経は通常は逆転します。しかし、ホルモンレベルの変動に応じて治療計画を調整する必要があります。
- 下垂体障害:
- 管理: 下垂体障害による無月経は、ホルモン補充療法によって管理されることが多いです。また、下垂体腫瘍が原因の場合は、手術や放射線治療が必要となることもあります。
- 予後: 下垂体障害の治療は複雑で、しばしば複数の専門家による協力が必要です。状況によっては完全な回復が難しい場合もありますが、多くの症状は管理可能です。
無月経の異なるタイプの女性の予後
無月経のタイプによって予後が異なります。原発性無月経の場合、遺伝的または解剖学的な異常が原因である場合が多く、これらの状態は治療がより困難であり、完全な月経周期の回復が難しい場合があります。一方、続発性無月経の場合は、ライフスタイルの変更、ストレスの管理、基礎となる医学的状態の治療により、月経が正常に戻る可能性が高くなります。
8. 受診のタイミング
月経は女性の健康のバロメーターとも言えるため、月経不順や無月経はしばしばより深刻な健康問題の兆候となり得ます。そのため、無月経の症状を認識し、適切なタイミングで相談することは非常に重要です。
受診すべきタイミング
- 初潮が遅い場合: 若い女性や少女で、15歳になっても初潮が始まらない場合は、原発性無月経の可能性があります。
- 月経が突然止まる場合: 通常の月経周期がある女性で、何の前触れもなく月経が3ヶ月以上停止した場合は、続発性無月経の可能性があります。特に、体重の急激な変化、過度のストレス、食生活の変更などがあった場合はその傾向にありますので、速やかにご相談ください。
- 関連症状が伴う場合: 無月経に加えて、異常な体毛の増加、乳房からの分泌物、極端な体重変動、持続的な下腹部痛などの症状がある場合は、内分泌障害やその他の疾患が潜んでいる可能性があるため、受診をしてください。
早期診断と治療の重要性
無月経の早期診断と治療は、長期的な健康を守るために不可欠です。無月経は、生殖健康のみならず、骨密度の低下や心血管疾患リスクの増加など、広範な健康問題に影響を及ぼす可能性があります。
9. まとめ
- 無月経の定義と分類: 無月経は原発性と続発性の二つに分けられ、それぞれ異なる原因があります。対策も異なるため、早めに相談をしましょう。
- 診断: 医師の診察、超音波検査、血液検査、画像検査、場合によっては遺伝子検査を通じて、無月経の原因を特定します。
- 治療: 原因に応じてホルモン療法、手術、生活習慣の改善が含まれ、将来の妊娠希望がある場合は特別な治療が必要です。
- 予後と管理: 病状に応じた適切な管理と継続的なフォローアップにより、月経を正常な周期へと改善します。
- 受診のタイミング: 初潮が遅い、月経が突然止まる、関連症状が伴う場合など、早めに婦人科に受診をしましょう。
更新日:2026.04.20
監修医情報
院長 産婦人科専門医
干場 みなみ
日本赤十字社医療センター 勤務
国立国際医療研究センター 勤務
リプロダクションクリニック東京 勤務
まきレディースクリニック、biotopeクリニックを経て2023年12月開業に至る。
女性ヘルスケア学会
性感染症学会
日本生殖医学会